楽楽風塵

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2018-01-01から1年間の記事一覧

「戸籍」とは何かーーその機能と役割について

戸籍にはいかなる機能があるのか。遠藤正敬『戸籍と国籍の近現代史ーー民族・血統・日本人』の第一章をもとに簡単に整理してみたい。 戸籍と国籍の近現代史――民族・血統・日本人 作者: 遠藤正敬 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 2013/09/30 メディア: 単…

Paul Starr "the Sociology of Official Statistics"

Paul Starr, 1987, 'The Sociology of Official Statistics' William Alonso and Paul Starr eds. "The Politics of Numbers", New York: Russell Sage, 7-57. という論文をまとめる。 The Politics of Numbers (Russell Sage Foundation Census) 作者: Will…

大阪なおみ選手と「ハーフ」をめぐる言説について

今週、大阪なおみ選手の全米オープン優勝のニュースが駆け巡った。それ自体は非常に喜ばしいニュースだが、そのニュースをめぐって様々な言説が吹き荒れている。ここでは、そのニュースについての雑感などをまとめてみたい。 大阪なおみ選手優勝のニュースは…

Rogers Brubaker "Nationalism reframed: Nationhood and the National Question in the New Europe"

Nationalism Reframed: Nationhood and the National Question in the New Europe 作者: Rogers Brubaker 出版社/メーカー: Cambridge University Press 発売日: 1996/09/28 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログ (3件) を見る 今回は、Rogers Bru…

メモ:Tseng Yen-Fen and Wu Jieh-Min "Reconfiguring citizenship and nationality: dual citizenship of Taiwanese migrants in China"

今回は、Tseng Yen-Fen and Wu Jieh-Min,2011, 'Reconfiguring citizenship and nationality: dual citizenship of Taiwanese migrants in China',"Citizenship Studies"15(2): 265-282.の要約である(訳せば「シティズンシップとナショナリティを再構成…

クリスチャン・ヨプケ『軽いシティズンシップ』

今回はクリスチャン・ヨプケ『軽いシティズンシップ』のレビューを書く。 軽いシティズンシップ――市民、外国人、リベラリズムのゆくえ 作者: クリスチャン・ヨプケ,遠藤乾,佐藤崇子,井口保宏,宮井健志 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/08/28 メディ…

メモ:台湾(中華民国)の国籍制度に関する覚書(日本統治から戦後にかけて)

台湾の国籍制度に関して大まかな歴史を整理しておきたい。参考にする文献は以下の三つ。 鶴園裕基,2014,「無効化する国籍ーー日華断交の衝撃と国府の日本華僑統制・保護の変容」『華僑華人研究』11: 38-55. ーーーー,2016,「すれ違う『国』と『民』ーー…

メモ:台湾(中華民国)における国籍制度の歴史

台湾(中華民国)における国籍制度の歴史についての備忘録。参照したのは以下の本の特に5章。 移民政策の形成と言語教育―日本と台湾の事例から考える 作者: 許之威 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 2016/01/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見…

メモ:日本統治時代の台湾に関する研究

日本統治時代の台湾に関する研究として参照必須の文献を列挙する。(今後拡大予定) ・台湾全体にかかわるもの 若林正丈『台湾抗日運動史研究』→台湾人エリートの言説など 駒込武『植民地帝国日本の文化統合』→教育や文化政策など 小熊英二『〈日本人〉の境…

メモ:台湾における戸籍制度の変遷(1945年から2000年まで)

現在、台湾における戸籍制度の変遷について調査しているので、ここに断片的ではあるが、調べたことを整理しておきたい。 台湾における戸籍制度の歴史的変遷についてまとめた論文として最も著名なものは、台湾の社会学者・王甫昌による『由「中國省籍」到「台…

近代国家誕生前夜の歴史についての覚書

国家の歴史について語るとき、多くは近代から話が始まり、それ以前の前近代(すなわち近世、中世)にいかにプロトタイプとしての国家が生成されていったのかということはあまり注目されてこなかった。もちろん、現在の形での「国家」が出来上がったのは紛れ…

Theda Skocpol "Bringing the State Back In: Strategies of Analysis in Current Research"

今回はシーダ・スコッチポルらが編集した『国家を取り戻す』という論文集の序論(p.3-37)を簡単にまとめておきたいと思う。読み飛ばしてしまったのであまり読解できていないが、分かった箇所だけを簡単にまとめて次に読み直したときにすぐに内容を理解でき…

カール・マンハイム「知識社会学」

今回はカール・マンハイムの「知識社会学」という論稿について。参照した文献は、青木書店から出版されていた『知識社会学ーー現代社会学体系8』のp.151-204である。割と昔の版だが、比較的訳は分かりやすかったと思う。 知識社会学 現代社会学大系8 作者: …

ユルゲン・ハーバーマス『後期資本主義における正統化の問題』

最近復刊されたユルゲン・ハーバーマス『後期資本主義における正統化の問題』について。 後期資本主義における正統化の問題 (岩波文庫) 作者: ハーバーマス,山田正行,金慧 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/01/17 メディア: 文庫 この商品を含むブロ…

Andreas Wimmer "The Making and Unmaking of Ethnic Boundaries: A Multilevel Process Theory"

今回はアンドレアス・ウィマー(Andreas Wimmer)の"The Making and Unmaking of Ethnic Boundaries: A Multilevel Process Theory"について。下記リンク参照(ただしダウンロードはAmerican Journal of Sociologyの規定により有料)。 https://www.journals…

知識社会学に関する覚書き

以下の本を読んだので、覚書をば。 「ボランティア」の誕生と終焉 ?〈贈与のパラドックス〉の知識社会学? 作者: 仁平典宏 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2011/03/07 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 107回 この商品を含むブログ (22件) …

田村哲樹『国家・政治・市民社会』

今回は少し寄り道して、田村哲樹『国家・政治・市民社会ーークラウス・オッフェの政治理論』について。(おそらく絶版になっているので、アマゾンではかなり高騰している。名著なので、違う出版社からでもいいから復刊してほしい。) 国家・政治・市民社会―…

Rogers Brubaker "Beyond 'identity'"

今回はロジャース・ブルーベイカーの論文、"Beyond 'identity'"についてである。下記リンクでダウンロード可能。 (https://www.sscnet.ucla.edu/soc/faculty/brubaker/Publications/18_Beyond_Identity.pdf) 既刊翻訳である『グローバル化する世界と「帰属…

友枝敏雄「言説分析と社会学」

もう一つ、同じ『言説分析の可能性』の中に収められた友枝敏雄「言説分析と社会学」という論稿をまとめる。 言説分析の可能性―社会学的方法の迷宮から (シリーズ 社会学のアクチュアリティ:批判と創造) 作者: 佐藤俊樹,友枝敏雄 出版社/メーカー: 東信堂 発…

橋爪大三郎「知識社会学と言説分析」

今回は、知識社会学と言説分析の関係性についてメモしておきたい。 参照する文献は以下のもの。なかなか凝りに凝ったレトリックまみれの難渋する論稿ばかりだが(フランス現代思想を迂回した研究者にありがちである)、その中でも比較的わかりやすく、きれい…

ロジャース・ブルーベイカーの「認知的視座」について

以前、ブログにちょろっと書いたブルーベイカーの「認知的視座」についてのメモを今回は整理のため、より詳細に書いておきたい。 前回のブログ( http://blog.hatena.ne.jp/cnmthelimit/cnmthelimit.hatenablog.com/edit?entry=8599973812299186816)ではナ…

佐藤成基「国家の檻」

これまた佐藤成基先生の論文だが、今回は「国家の檻ーーマイケル・マンの国家論に関する若干の考察」という論文を取り上げる。以下にPDFを貼っておく。http://www.t.hosei.ac.jp/~ssbasis/53-2sato.pdf マイケル・マンは正直日本ではあまり知られていないが…

佐藤成基「ナショナリズムの理論史」

今回もナショナリズム論の整理のために記しておきたい。 今回は佐藤成基著「ナショナリズムの理論史」という論文についてまとめる。これは大澤真幸氏が編集した有斐閣から出ている『ナショナリズム論・入門』という本に挿入されている短い論文である。 ナシ…

ロジャース・ブルーベイカー『フランスとドイツの国籍とネーション』

もう一冊、ブルーベイカーの『フランスとドイツの国籍とネーションーー国籍形成の比較歴史社会学』について雑感をまとめる。 フランスとドイツの国籍とネーション (明石ライブラリー) 作者: ロジャースブルーベイカー,佐藤成基,佐々木てる 出版社/メーカー: …

マックス・ウェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』

久しぶりの投稿、血沸き肉躍る。 今回はマックス・ウェーバーの有名な論文『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』(いわゆる「客観性」論文)について。 社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」 (岩波文庫) 作者: マックスヴェーバー,Max …